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「ウルジャン」フェア開催記念!ウルトラジャンプ編集長・新藤正人さんスペシャルインタビュー!

『銀河英雄伝説』や『The JOJOLands』などの話題作を送り出し、今年創刊25周年を迎えた「ウルトラジャンプ」。Reader Storeで開催中の「ウルトラジャンプフェア」を記念して、編集長・新藤正人さんのスペシャルインタビューを掲載します。長く在籍した「週刊ヤングジャンプ」では『テラフォーマーズ』など立ち上げ、昨年6月から「ウルトラジャンプ」の編集長に就任された新藤編集長。「ウルトラジャンプ」はもちろん、普段知ることのできない月刊誌と週刊誌の違いなど、ベテラン編集者ならではの貴重なインタビューをぜひお楽しみください!

ウルトラジャンプ 2024年5月号

■小説かジャンプ編集部を希望して入社。配属は「間をとって?」ヤングジャンプ編集部に


―—まずは新藤さんの編集者としての歩みを教えていただけますか。

新藤 僕は今44歳で、入社の時に小説か少年ジャンプ編集部を希望したんですが、配属はヤングジャンプでした。配属時の上司からは「小説と少年マンガの間をとって、ヤングジャンプ編集部に配属されたんじゃない?」と言われまして。そこから20数年ずっとヤングジャンプ編集部で働いてきました。最初は「“小説と少年マンガの間”って何だろう?」と思ったんですが(笑)、自分が読んできた少年マンガと青年マンガは作りが少し違って、「青年誌ではこんな表現も“あり”なんだ」と衝撃を受けました。今はまた少しずつ変わってきていると思いますが、たとえばヤンジャンで連載中の『ダイヤモンドの功罪』も、少年が主人公ですが、気持ちの動きの追い方はやっぱり青年誌らしいなと個人的には感じますね。

――才能ゆえに孤立してしまう天才野球少年とその周囲の心情がリアルに描かれていて、新鮮ですよね。新藤さんご自身は、これまでどんな作品を担当されてきたんですか?

新藤 配属されて初めのほうに担当させてもらったのは、『エルフェンリート』という非常に個性的な作品でした。その後いろんな作品の担当をしましたが、担当編集者として連載を立ち上げて、今もヤンジャンにあるのは『テラフォーマーズ』やギャグマンガ『スナックバス江』です。昨年6月にウルトラジャンプ編集長になることが決まって、週刊誌から初めて月刊誌の編集部に異動することになったので、辞令が出た日から荒木飛呂彦先生の『ジョジョの奇妙な冒険』を第一部から読み直しました(笑)。『ジョジョ』は出だしのスピード感から最高で、やはり特別な作品ですね。連載中の『The JOJOLands』は校了しながら毎号「おもしろすぎる!」と思っています。

―—編集者として見た時に、週刊誌と月刊誌のマンガにはどんな違いがありますか?

新藤 週刊誌時代に先輩から教わったのは、極論、途中まで「どうかなあ」という展開だとしても、ラスト2ページがめちゃくちゃおもしろかったら勝ちなんだよ、と。この考え方が正しいかどうかはともかく、「来週も読まなきゃ」と読者に思ってもらえるように「引きを強烈に作れ」と叩き込まれました。月刊誌では、もちろん引きは大事ですが、それ以上に1話ごとの満足度をそれぞれの作家がかなり意識してくれているなと感じます。「この1話をしっかり読んだ」というカロリーがあるというか。ウルトラジャンプの1000ページ近い厚さに合わせたおもしろさが各作品にあって、素晴らしいと思っています。

■伝統として戦うマンガはずっとやってきたので、新しいバトルマンガもやりたいなと考えています

―—ジャンプと名前のつく雑誌は、少年ジャンプ、ヤングジャンプ、グランドジャンプ。WEBのとなりのヤングジャンプなどたくさんあります。ウルトラジャンプの特徴を教えてください。

新藤 ウルトラジャンプは1995年にヤンジャンの増刊として始まりました。最初は当時の編集長が自分の好きな先生方を集めてつくっていて、まず、絵が抜群にうまい作家が多かった。当時はSFファンやオタク的なコアな読者を攻めた作りの雑誌でした。そこから「マンガがすごく好きな人たち」と「最先端のものを求める」という遺伝子が残って、今は『The JOJOLands』『銀河英雄伝説』といった看板作品を中心に、載っているマンガの幅がとにかく広いんです。まさに若さと多様性にあふれる雑誌になってきています。

―—ページ数があり、作品の幅も広くて、まさに雑誌を読む醍醐味にあふれていますよね。

新藤 良い意味でカオスです(笑)。あと、ウルトラは読み切りのレベルも高いんですよ。ウルトラに掲載された読み切りが、後日WEB媒体のとなりのヤングジャンプに載せてもらうと、人気上位になったり、バズることも多い。僕としてはこの読み切りから連載までつなげて、次の看板になるような作品が出てきてほしいです。「マンガ好きの読者にここで新しい何かを見つけてほしい」という思いは編集部に脈々と受け継がれているので、これから「来る」マンガをたくさん届けていきたいですね。

―—今年マンガ大賞・バトル大賞・作画大賞の3つの部門に分けて募集する新たな賞「ウルトラ3大漫画賞」を作られたり、“作品”ではなく“作者”を発掘する「ウルトラダイヤモンド漫画家オーディション」を始められたのもそうした思いからなんでしょうか。

新藤 そうですね。普通の漫画賞も残したまま特にバトル大賞を作ったのは、今は月刊誌できっちりバトルを描くマンガが多い時代ではないと思ったからです。ウルトラの伝統として戦うマンガはずっとやってきたので、新しいバトルマンガもやりたいなと考えています。オーディションのほうは、たとえば他誌で企画が流れてしまった時にもう一度別の雑誌への投稿から始めると、新しい読み切りを描いて賞を取って担当がついて連載ネームを描いて……と、どんなに才能がある方でも2年はかかってしまうんです。だったら手元にある作品を持ってきていただくのをきっかけに「一緒にやりましょう」という流れが出来てもいいんじゃないかなと。

―—ちょっと珍しいマンガのオーディションには、そんな意図があったんですね。

新藤 極力いろんなマンガ家に陽の目が当たるといいですよね。

■編集部みんな、マンガが大好きです。マンガ以外のことをしているのかなってドキドキしちゃうくらい

―—ウルトラジャンプ編集部はどんな編集部ですか?

新藤 男女問わず、編集部みんな、マンガが大好きです。マンガ以外のことをしているのかなってドキドキしちゃうくらい。「土日何してるの?」って聞いたら「虚無です」って言われたり(笑)。雑談でも「あのマンガがおもしろかった」という話を延々としています。僕自身、彼ら・彼女らの提出してきた作品からトレンドを教わることも多くて、おもしろいですよ。たとえば5月に1巻がでる『恋は忍耐』は「恋愛人格矯正ラブコメディ」と銘打ってるんですけど、「自分もこんな風にマンスプレイニングしないよう気をつけなきゃ……」と気づかされたりと、すごく時代感覚があるマンガですよね。『そこで星屑見上げてろ』も、アイドルが好きな担当と作家で作っていたり。マンガは必ず深層の部分で時代とつながっていますが、特に青年誌のウルトラでは、よりわかりやすく時代性を意識しています。

―—今後のウルトラジャンプの見どころを教えていただけますか。

新藤 4月発売の号から、立て続けに新連載が始まります。それぞれテーマもテイストも全く違うおもしろいマンガになっていますので、楽しみにしていてください。雑誌一冊にいろいろな作品が集結してそこから何かが世に出ていく形は、部数の増減こそあれ、今後もしばらく続くはずです。新作の発信基地として、みんなに「ああ、あのマンガ知ってる」と言われる作品をどんどん打ち出していくのが、編集長としての目標です。

―—最後に、新藤さんが編集者を目指すきっかけとなった作品を1作、ご紹介ください。

新藤 土田世紀先生の『編集王』です。学生時代から何度読んだかわかりません。昔は主人公の若手編集者カンパチやデスクの青梅さんが言っていることが正しいと思っていたんですが、年齢を重ねるとまた見え方が変わってきて。『編集王』は本当にあらゆるバリエーションで編集者というものを立体的に描いているんですよ。ゲームとマンガの関わり方編もあったし、女性編集者編もあったし。作品づくりに喜びを感じる人たちの世界に自分も入りたいと思ったのは、『編集王』がきっかけでしたね。

―—編集者たちの思いに胸が熱くなる傑作ですよね。

新藤 僕は本当にずっとおもしろく編集者をやらせてもらっているんです。ウルトラジャンプでも自分自身おもしろがりながら、読者の皆さんによりおもしろいものを届けていきたいです。もちろん現行作も自信を持って送り出していますが、これからさらにパワーアップしていきたいと思いますので、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

インタビュー・文 横井周子


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『編集王』土田世紀・著/小学館

幼い頃、『あしたのジョ-』を読んで感動し、ボクサ-になると宣言したカンパチこと桃井環八。念願のボクサ-になり、チャンピオンを目指しているものの、成績は不振で、万年10回戦ボ-イと呼ばれていた。ある日、定期検診を受けたカンパチは、眼の精密検査を受けるようにと医者から忠告を受ける。網膜剥離でボクシングを断念せざるを得なくなったカンパチは、幼なじみのヒロ兄ィこと青梅広道の紹介で、青梅が働くヤングシャウト編集部でアルバイトをすることになる。

▼プロフィール

写真:新藤正人

新藤正人 
2002年に集英社入社。「週刊ヤングジャンプ」に配属され、20年以上在籍し、『テラフォーマーズ』『スナックバス江』などの様々な作品を担当。2023年6月「ウルトラジャンプ」編集長に就任。最近は柔道の現地観戦が趣味。できる限り朝イチで一回戦から見るようにしています……。


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