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「弱さは悪いことじゃない」8月ドラマ化の話題作『Shrink ~精神科医ヨワイ~』原作・七海 仁& 漫画家・月子スペシャルインタビュー!直筆色紙プレゼントも!

Reader Storeで開催中の「グランドジャンプフェア」を記念して、話題作『Shrink ~精神科医ヨワイ~』の原作・七海仁先生と漫画家・月子先生のスペシャルインタビューを掲載!

誰にも相談できずに苦しんでいる潜在患者が数多くいると言われる日本で、心に病を抱える患者と向き合い、人々の心の影に光を照らす精神科医・弱井の姿を描いた本作。多くの悩める読者の共感と感動を呼び、毎回「これは自分だ」という読者からの反響も大きいと言います。

2019年に連載開始され、2021年には第5回さいとう・たかを賞を受賞しその作品性が高く評価され、さらに2024年8月にはNHKでドラマ化も決定するなど、多くの話題を呼んでいる本作の著者であるお二人に、マンガ制作の裏側についてお話を聞きました!

さらに直筆の色紙プレゼントも! ぜひ最後までお楽しみください。

『Shrink ~精神科医ヨワイ~』原作:七海 仁 漫画:月子

新宿の路地裏にある「ひだまりクリニック」の弱井幸之助は、変わり者だが、優秀な精神科医。パニック障害、うつ病、発達障害、PTSD……。様々な問題を抱えてクリニックに訪れた患者ひとりひとりの言葉に耳を傾け、心の悩みを優しく解きほぐしていく。そんな弱井には、実は悲しい過去がありーー。


■そこには誰にとっても無関係じゃない物語がある。

――『Shrink ~精神科医ヨワイ~』は、精神科医を主人公にした医療マンガです。本作は七海さんの漫画原作者デビュー作でもありますが、最初に精神医療というテーマを選ばれた理由を教えていただけますか。

七海 私はもともとシナリオを書いていて「グランドジャンプ」編集部から漫画の原作を書いてみないかとお声がけいただいたんです。最初は別のテーマをいただいたんですがしっくりこなくて……。そこで私から「精神医療をテーマに書いてもいいですか?」と提案しました。私の家族が精神疾患を抱えていて、もう長いんですね。10年以上一緒に病院や家族会(※精神疾患当事者のご家族が参加する会)に行く中で、必要な情報が世の中に行き渡ってないんじゃないかと感じていました。

――なぜ精神医療についての情報が届きづらいのでしょうか。

七海 日本では精神科にかかるのは「特別なこと」という意識がまだあって、そういう経験を話す人がやっぱり少ないんでしょうね。また、「自分は心の病気にならない」「かかるのは弱い人なんだ」といった思い込みや偏見もあると思います。漫画を通すことで正しい知識や情報を届けることが出来るのではないかと思いました。それに、心の病と闘っている人を身近で見ていると、少年マンガのヒーローと変わらないように感じるんです。難しい問題とまっすぐに戦っている姿があって、そこには誰にとっても無関係じゃない物語がある。

――第一話で描かれた弱井先生の「そんなことで精神科にかかっちゃダメですか」というセリフも印象的でした。精神医療をもっと身近に、自分ごととして捉えていいんじゃないかという問いかけですよね。

七海 『Shrink』はマンガなので、おもしろく読めることが一番ですが、できれば今苦しんでいる人にちょっとでも楽になってほしいとか、自ら命を絶ってしまう人を減らせたらという思いもあります。弱井のセリフにはその願いを込めていて、精神医療につながるハードルが少しでも下がってほしいですね。しんどいなと思ったら、我慢しすぎずに精神科・心療内科どちらでもいいので行ってみることを考えてほしいです。

©七海 仁 /月子/集英社

――弱井先生は作者から見てどんな主人公ですか?

七海 実はスーパードクターですよね(笑)。知識も豊富で、治療法もよく知っていて、ハーバードにも留学していて。だけど、重要なのは彼が〈完璧な人間ではない〉ということ。部屋はぐちゃぐちゃだし、よく食べ物をこぼすし。それに、昔大切な人を亡くしたことがあって、彼自身も心に傷を負っています。不完全な人間だからこそできることがあるはず、と思いながら書いています。

――弱井幸之助という名前にもその思いが込められていますね。

七海 「ヨワイ」という名前をつけたのは、弱さは悪いことではないから。これは、特別強いわけではない、生身の人間が人を助けるお話なんです。

©七海 仁 /月子/集英社

■「これは俺だ」「わかる」。それぞれの辛さに寄り添うストーリー

――『Shrink』では、パニック障害やうつ病、大人の発達障害、双極性障害など、さまざまな精神疾患に向き合う人たちが描かれています。

七海 連載当初は読者の方が入りやすいように、なるべく日本で多いとされる疾患を取り上げるようにしていました。今は読者の皆さんに身近に感じていただけるテーマと、震災やコロナ禍のような社会問題を出来る限り交互に扱うようにしています。ちょうど今連載しているシリーズでは薬物依存症を取り上げているんですが、これまでと比べると特に少し重い内容かもしれません。でも、今、実際に社会で起きている問題としてしっかり届けたい気持ちがあって、長めに描かせていただいています。

月子 薬物依存症編の主人公・唯人が、本当に孤独をまとったキャラクターなんです。口下手で思っていることが全然言えなくて……。描きながらも、その姿を見ていると「わかる」と思うんです。幸せになってほしいってすごく思わせられるキャラクターなんですよ。

――各シリーズの主人公が共感しやすいのも『Shrink』の魅力ですね。特に反響が大きかったシリーズはどれですか。

七海 11巻に収録されたアンガーマネジメント編の反響は大きかったですね。若手社員の言動に対するイライラを抑えられない50代サラリーマンを主人公にしたところ、40代から50代ぐらいの男性から「あれは俺だ」という声をたくさんいただきました。女性からの反応が大きかったのは産後うつ編です。月子さんも気に入ってくださって。

月子 産後うつ編、大好きです。私自身は出産後、無理せず育児しているつもりだったんですが、苦しんでいるお母さんのがんばりを弱井先生が受け止めるシーンでウワーっと涙が出て。やっぱりちょっとがんばりすぎていたかもしれないなあって描きながら気づかされましたね。

©七海 仁 /月子/集英社

――「怒りを感じたら6秒待つ」ルールや呼吸法など、弱井先生が教えてくれる様々な対策も生活のヒントになります。

七海 その疾患に関係のない読者の方にも実践できるTIPSのようなものは、なるべく入れたいと思っています。アンガーマネジメント編で描いた怒り、産後うつ編で描いた不安への対処法も、世代や男女問わず誰にでも取り入れられるものですし。取材先の方々に色々と教えていただいています。

©七海 仁 /月子/集英社

――取材はどのように行っていらっしゃるんですか。

七海 まず自分でリサーチをして知識をある程度入れた後、作品全体の監修をしてくださっている精神科医の先生にお話を伺います。その後、専門医・当事者・支援職の方々、テーマによってはさらに関係機関などに取材をさせていただいたり。伺う前に持っていたイメージとは違うお話を毎回聞かせていただけるので、取材はとても大切にしています。

■この夏、NHKでドラマ化が決定!

――お二人は原作と作画で役割分担をされていますが、どのように作品作りをされているのでしょうか。

七海 私が書いたシナリオをもとに、月子さんがネームに起こしてくださり、そこに修正を加えて、作画に入っていただきます。完成の一歩前で線画があがってきたら、取材をさせていただいた方々にお送りして、またそこで修正が入ったりして、やりとりを重ねて完成していくという流れです。

月子 いただくシナリオの完成度が高くて、毎回すごくおもしろいんです。絵にするのが楽しくて、やりがいがあります。先入観として、精神医療には暗い・重たいといった印象があると思うので、私はできるだけ風通しの良いあたたかみのある絵を心がけています。

――デリケートなテーマに、お二人が丁寧に向き合いながら描いていらっしゃるのが伝わってきますね。今年の夏には、NHK土曜ドラマでの実写化も決定しています。ドラマ化にあたり何かお願いしたことはありますか?

七海 まず、医療従事者として誤っていることをしないでいただきたいということ。そして、当事者の方を描く際は、症状のシーンだけでなく、その葛藤も映していただきたいということ。その2点を特にお願いしましたね。原作でもそうですが、心の病を持つ方たちにとって一番苦しいはずの時間をちゃんと描くことは大切だと思っています。同じ思いを抱える方が「自分も病院に行ってみようかな」と思ってくださることもあるでしょうし、疾患に対して余計な誤解を与えるリスクも減らせるはずです。ドラマ制作班の皆さんとは何度も話し合いを重ねて、ドラマのシナリオも一緒に練らせていただく機会を頂きました。

月子 撮影の見学にうかがったんですが、弱井先生を演じる中村倫也さんが、柔らかい雰囲気そのままでした。しっとりした語り口も。

七海 月子さんの絵そのもので、「弱井がいる!」って感じでしたね。看護師の雨宮を演じる土屋太鳳さんも素敵で、おふたりがいらっしゃるだけでその場があたたかくなるような気がしました。

©七海 仁 /月子/集英社

――マンガの良さがそのままドラマになっていそうで、楽しみです。最後に、お二人それぞれから、マンガに携わるきっかけになった、好きな作品を教えていただけますか?

七海 もともとマンガが大好きなので、選ぶのが本当に難しいんですが……。人生に影響を与えた作品というと、物心ついたときから大好きだった藤子・F・不二雄先生のマンガでしょうか。作品はどれも大好きですが、特にSF短編が好きで、子供の頃に短編集を全部集めました。ひねりがきいていて、さらりと読めるけれど、実は深いテーマがある。読んだ後もずっと心に残るお話が多くて、影響も受けていると思います。

月子 私は兄が二人いて、兄の部屋でマンガをこっそり読んできたんです。床に落ちている雑誌を、「ヤングジャンプ」「ヤングマガジン」「ビッグコミックスピリッツ」「モーニング」とか全部読んで(笑)。だから青年マンガに影響を受けていて、特に曽田正人さんと土田世紀さんの大ファンです。熱いマンガが好きですね。曽田さんは『め組の大吾』、『シャカリキ!』、『昴』、『capeta』、土田さんだと『雲出づるところ』。また、有間しのぶ先生の『モンキー・パトロール』も大好きです。個性的な女性主人公たち三者三様の生活が優しい筆致で描かれていて、金言もふんだんに散りばめられています。キャラクターたちを現実の友人のように感じて、共に生きている気がしている、一生大切な作品です。ぜひ読んでみてください。

インタビュー・文 横井周子


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『藤子・F・不二雄SF短編コンプリート・ワークス』藤子・F・不二雄/小学館

SF短編、全作品収録の決定版が登場!
2023年、TVドラマ化を機に、藤子・F・不二雄のSF短編シリーズ全110作品+αを単行本全10巻に再編集し、装いも新たに刊行! 
「異色SF」シリーズ6冊(第1~6巻)と「少年SF」シリーズ4冊(第7~10巻)に分け、それぞれ概ね発表順に収録します。

▼漫画家・月子先生の人生に影響を与えた作品はこちら!

『モンキー・パトロール』有間しのぶ/祥伝社

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▼プロフィール

●七海 仁(ななみ・じん)
漫画原作者。アメリカでジャーナリズムを学び、帰国後通信記者、雑誌編集長などを経て独立。2019年「グランドジャンプ」(集英社)『Shrink 〜精神科医ヨワイ〜』にて漫画原作者デビューし、現在も連載中。趣味は旅行、謎解き、マーダーミステリー。

●月子(つきこ)
漫画家。岩手県盛岡市出身。2000年「別冊ヤングマガジン」(講談社)にてデビュー。著書に『僕の血でよければ』(集英社)、『彼女とカメラと彼女の季節』『つるつるとザラザラの間』『バツコイ』(講談社)、『トコナツ』(幻冬舎)、『最果てにサーカス』(小学館)など。「グランドジャンプ」(集英社)にて『Shrink〜精神科医ヨワイ〜』を連載中。趣味はカフェ、映画、ブーケ作り。


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