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人気アイドルにして新人漫画家・中丸雄一が描く「ざわめく」世界とは?デビュー作『山田君のざわめく時間』発売記念インタビュー!

人気アイドルグループKAT-TUNの一員にして、今や押しも押されもせぬ国民的マルチタレントとして活躍する中丸雄一さん。2023年夏、積年の夢を叶え「月刊アフタヌーン」(講談社)での短期連載にて漫画家としてデビューを果たし、2024年1月23日に初の単行本となる『山田君のざわめく時間』が発売された。
多かれ少なかれ誰もが胸の奥に抱える「ざわめき」を、主人公“山田君”を通してどこかシュールに、そしてリアルに描く今作は、きっと幅広い読者に受け入れられていくはずだ。作者がどんな想いで描いているのか、その心の内をほんの少しだけでも覗いてみたい。
新人漫画家・中丸雄一さん、Reader Store 初登場です。

KAT-TUN中丸雄一漫画家デビュー!『山田君のざわめく時間』発売記念インタビュー

少年の頃の夢が叶ったなという感じです。

───短期連載での漫画家デビュー、そして初の単行本の出版。今はどんなお気持ちですか?

 中丸 連載に関しては、少年の頃の夢が叶ったなという感じです。単行本は、何年か前、また本格的に漫画を描こうと思ったときに抱いた目標だったんですよね。ファンの人たちにも「いつか単行本出します!」って宣誓してたんですよ。口に出して逃げ道をなくすことで頑張れるというのがあると思うんですけど、まだ何にも決まってないのに「今年こそは出しますから!」と言い続けた結果、そのうち出す出す詐欺みたいになってて(笑)。それがようやく実現できて嬉しいですね。

 ───まさしく有言実行ですね。

 中丸 もともとはむしろ、不言実行が美学みたいなところがあったんですよ。10年ちょっと前に通信の大学に入ったんですけど、入学したことを公表しなかったんです。卒業できない可能性もあったので。ただ、ご時世的にも隠し通すのは無理で、どこかのタイミングでバレたんです。でも、バレたことによって、人に見られてるから頑張らなければならないというメンタリティになって、おかげで卒業できたと思ってるんですよね。それが自分のなかではデカくて。だから宣誓して逃げ道を断てばいいんだって学んじゃったんです。それを漫画の単行本に落とし込んだら、結果出す出す詐欺みたいになっちゃった、ということです(笑)。

 ───『山田君のざわめく時間』では、気遣いしすぎて空回りする“山田君”の心の機微が実に丁寧に描かれていますが、ご本人が彼に共感していないとこれほどにリアルに表現できないと思います。ずばり、山田君のなかに中丸さんが占めるパーセンテージは?

 中丸 90%ぐらいじゃないですかね?

 ───山田君はほぼ中丸雄一である、と。

 中丸 逆に言うと、まったくのゼロからオリジナルのストーリーを作る際に、知らない領域のことを描こうとすればとことん取材した上で描くと思うんですけど、僕はそもそも漫画家としてそこまでは行けていない。じゃあ何を描こうかとなったら、自分の周りのことじゃないとちょっと無理だから、自分中心の話になったんです。

───では、山田君と正反対の性格の持ち主である友人の“ごうわん君”は、中丸さんの日常の中で「うわぁ、コイツ…」と思う人間の集合体みたいなキャラクターですか?

中丸 そこが難しいところで、“ごうわん”も“斉藤”(同じく山田君の友人)も、部分的には僕の要素を入れてるんですよ。そうじゃないと気持ちがわからない。ごうわんは都市伝説が好きで、友達に何時間も話し続けてうんざりさせるキャラクターなんですけど、そこだけ取り上げると、僕はかなりごうわん寄りの人間なんですよね。たぶん僕がこういう話をしたときに、周りの人は「うわ、めんどくさ」って思ってるだろうな、って思って、あれは描いているんです。斉藤でいうと、パソコン関係や機材好きなところに、僕の思いを乗せていたりしますしね。だから、ごうわんも斉藤も、それぞれ3割ぐらいは僕の要素ですね。

───登場人物の表情が豊かなのは、やはりご自身が投影されているからでもあるんでしょうね。

 中丸 もともとひとつのテーマとして、かわいらしくてポップな、小学生でも読みたくなるような絵柄を目指してはいるんです。でも時おり「ざわっ」として内面を描写するときに、ちょっとリアルに描きたい。そういうギャップを描きたいよねっていうのがあって、いろんなパターンで表情を見せられるように工夫はしていますね。 

僕がこうしてデビューできたのも、時代のタイミングが合ったんだなと思っています。

───多忙のなか、どんな環境でどうやって描いているんですか?

 中丸 基本的にはやっぱり、時間の確保がポイントですかね。生活の一部に組み込むことで今はどうにかなっています。具体的には、ちょっと早起きして、仕事に行くまで描いてますね。時間が足りないなとか、早く描きたいなっていうタイミングだったら、まぁタブレットでの作業なので、仕事の合間だったりにも描いてます。案外、どこでも描けるんですよ。

 ───まさに今の時代の漫画家さんですね。

 中丸 そうなんでしょうね。僕が漫画家を目指していた子供の頃とは時代が変わって、描く作業自体がアナログからデジタルに移行していますから。今や漫画を描くソフトまであるし、そういう意味では間口がめちゃめちゃ広がっているんですよね。昔は気合いだけではどうにもならなかった職業だと思うんですけど、今はそこは少し違うのかな、と。だから、僕がこうしてデビューできたのも、時代のタイミングが合ったんだなと思っています。

 ───ただ、締切に追われるのは、時代を問わずですよね?

 中丸 いや、それがまったく。僕はストックがいくらかある状態で参入できたので、締切に追われるということが今のところないんです。今やってるのも半年の短期連載でゴールがわかってる状況ですしね。でも、締切って、つらいと思ってしまうとますますつらくなるタイプのやつですよね(笑)。少なくとも今は単行本になるんだっていう希望しかないので、前のめりで描いてます! 

限界まで頑張って完成させたものが、プロの人からみれば10%程度のものでしかないみたいな、そういうところに気づき始めたというか。

───デビューからはまだ間もないですが、ご自身のなかで意識の変化や成長を感じる部分はありますか?

 中丸 プロの漫画家としての構え方を、僕はたぶんまだわかっていないんですよ。僕のなかで限界まで頑張って完成させたものが、プロの人からみれば10%程度のものでしかないみたいな、そういうところに気づき始めたというか。僕がプロらしくなるためには、その限界値を上げていかないといけない。もっとこだわって、時間かけて描いていくのは正直大変だなと思うけど、いやそれプロとして普通だから、みたいなことだと思うんですよね。今はそこへの移行中かな。感覚のアップデートが必要だし、なおかつまだ作業的に慣れていなくて効率的じゃないところもあるんで、それなりに時間がかかるとは思いますけどね。

 ───単行本『山田君のざわめく時間」には、もしかすると中丸さんの漫画家としての最初の過渡期が落とし込まれている?

 中丸 そうだと思いますよ。単行本は描いた順に構成しているわけじゃなくて、かといって後から手も入れていないので、僕のその過渡期というのをわかった上で読んでもらうと、これは初期のやつだな、これは最近の絵だなって、わかると思います。

 ───今後、漫画家として、また作品がどのように発展していくことを望んでいますか?

中丸 僕自身はほっこりしたいとか、笑いたいとか、そういう気分になりたいときに漫画を読むんですけど、僕の作品も読者にとってそういうものであれたらいいなと思ってます。それから、漫画が違う形に展開していくという夢もあって。漫画って、いろんなジャンルの会社とか、いろんなものとコラボできる可能性を秘めているじゃないですか。僕の漫画がどういう発展の仕方をしていくかは想像できていないんですけど、できればいろんな形になっていけばいいな、と。野望としてはアニメとか、映画とか、グッズとか、考えうるもの全部やりたいです(笑)。

インタビュー・ 文/斉藤ユカ 


▼漫画家・中丸雄一のデビュー作はこちら!

山田君のざわめく時間【電子限定特装版】

「エレベーターでの正しい立ち位置は?」
「友達の興味のない話を傷つけずに切り上げるには?」
「マッサージ店で凝っている場所をうまく伝えられない…!」
毎日の中で起こる様々なことがとにかく気になってしまう青年・山田雄一(やまだおいち)。彼の心の中は、気遣い、疑問、シミュレーションにあふれてざわざわと大忙し。

日常の中に潜む『ざわめく』瞬間を切り取る、味わい系日常ショートストーリー。アフタヌーン連載時の掲載話に加え、単行本でしか読めない80ページ超の書きおろしつき。さらに【電子限定特装版】では漫画家になることを夢見ながら一人コツコツと書き溜めていたデビュー前の習作ネーム「かぐや」の冒頭19Pを特別収録。

▼通常版はこちら!



▼漫画家・中丸雄一が気になるアフタヌーン作品

『ダーウィン事変』うめさわしゅん(著)/講談社

 テロ組織「動物解放同盟(ALA)」が生物科学研究所を襲撃した際、妊娠しているメスのチンパンジーが保護された。彼女から生まれたのは、半分ヒトで半分チンパンジーの「ヒューマンジー」チャーリーだった。チャーリーは人間の両親のもとで15年育てられ、高校に入学することに。そこでチャーリーは、頭脳明晰だが「陰キャ」と揶揄されるルーシーと出会う。「テロ」「炎上」「差別」……ヒトが抱える問題に、「ヒト以外」のチャーリーが、ルーシーとともに向き合うヒューマン&ノン・ヒューマンドラマ。 

▼漫画家・中丸雄一コメント
よし漫画描くぞと心に決めた頃、「ダーウィン事変」をたまたま読んで、漫画とはこういうことか! とある種の衝撃を受けました。絵柄だけの印象でギャグ漫画かなと思って読み始めたんですが、実は社会派な作品で、作者さんの主張もキャラクターに乗せて表現しているんです。漫画ってこういう自己表現の仕方もできるんだなと、あらためて感じました。僕も自分をちゃんと出せるように心がけたいなと、そんな風に思わせてくれた作品です。

▼プロフィール

中丸雄一(なかまる ゆういち)
1983年生まれ。2001年にKAT-TUN結成、2006年にメジャーデビュー。現在は、音楽活動、バラエティ番組出演等に加え、日本テレビ系列『シューイチ』のコメンテーター、ABCテレビ系列『朝だ!生です旅サラダ』生中継コーナーのリポーターを務める。二宮和也(嵐)、山田涼介(Hey!Say!JUMP)、菊池風磨(Sexy Zone)と共に運営するYouTubeチャンネル「よにのちゃんねる」は現在登録者数398万人超。
イラスト・マンガ関係の活動としては、2006年の『24時間テレビ29』でのスタジオジブリとのTシャツデザインの原案を手掛けることになり、それをきっかけにイラスト制作を開始。2012年から雑誌『WiNK UP』(ワニブックス)で「中丸雄一の絵本作家への道」、「中丸雄一のイラスト勉強会」を約9年間にわたり連載。2020年、新型コロナウイルス感染拡大に対して所属事務所のグループがプロジェクト『Smile Up!Project』を立ち上げた際には、公式SNSに4コマ漫画をアップ。


Reader Storeでは、『山田君のざわめく時間』電子限定特装版配信を記念して、「今大注目の新鋭マンガ特集」として、中丸雄一さんのデビュー作にくわえて、今注目の新鋭マンガ家作品をラインナップ! まだ知らない作品との出会いが見つかるかも。ぜひチェックしてみてください。

▼KAT-TUN中丸雄一漫画家デビュー!『山田君のざわめく時間』電子限定特装版配信記念「今大注目の新鋭マンガ特集」 

2024/01/23(火)0:00  ~ 2024/02/05(月)23:59

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