電車でスマホをスクロールする、その一瞬の時間に作品を届ける。「チャンピオンBUZZ」編集長・渡邉直城さんスペシャルインタビュー!
■マンガの読まれ方が大きく変わる中でのチャレンジ
――「週刊少年チャンピオン」の電子増刊として2023年に創刊したばかりの「チャンピオンBUZZ」(以下「BUZZ」)。まずは渡邉さんのご経歴を教えていただけますか?
渡邉 新卒で少年画報社に入社して、2020年から秋田書店へ。前職ではずっと青年誌畑だったのですが、秋田書店にきて初めて週刊少年誌に携わる事となりました。マンガ編集あるあるかもしれませんが、一番最初はとにかくマンガに関わることさえできれば正直なんでもよかったんです。仕事をはじめてから徐々に、不良マンガなど自分があまり触れてこなかったタイプのマンガのおもしろさを知って今に至ります。
――「BUZZ」創刊のきっかけを教えてください。
渡邉 そもそもは昨今の流れとして、作品点数を増やしたいという経営的な視点がありました。紙の雑誌はどうしてもページ数に限りがあるので、電子媒体で「週刊少年チャンピオン」とは異なるテイストの作品を届けられないか、と考えたのがスタートでした。
――点数を増やすねらいは、どういったところにあるんでしょうか?
渡邉 やっぱりマンガの読まれ方の変化は大きいですね。今の読者は、基本的にスマホベース。通勤電車でスマホをスクロールする、その一瞬の時間に作品を届ける必要がある。それには、作品という「点」だけではなくジャンルという「面」で露出を増やす必要があるんです。
――メディアの利用法が大きく変わる中で、雑誌の変化も感じますか?
渡邉 はい。雑誌はマンガの船であり母体なので、しっかり作ることは変わらず大事です。でも今は、出版社やレーベル、場合によっては作家さんの名前すらも知らないまま作品単体で読むユーザーが増えています。インターネットで流れてくるおもしろいマンガを読むという広まり方になってきていて、雑誌は過渡期にありますよね。
■異世界おじさんものは、ドラえもんの劇場版?!
――「BUZZ」は増刊としての販売形式も新しいですね。
渡邉 毎月第1木曜日発売の「週刊少年チャンピオン」を電子版で購入すると「BUZZ」もついてきて読むことができます。「チャンピオンクロス」という弊社のマンガサイトでも数週遅れで配信されています。
――異世界マンガを中心に展開されていますが、秋田書店の異世界マンガといえばシリーズ累計650万部を突破した「片田舎のおっさん剣聖になる」という大ヒット作がありますよね。
渡邉 『片田舎のおっさん剣聖になる』のヒットは、「BUZZ」創刊時にも頭の片隅にありました。「週刊少年チャンピオン」には異世界ものがなかったので、そこへの挑戦も含めて……。だから「BUZZ」ではおじさんをずっと推しています! 実はたまたま編集部に異世界ものが得意なスタッフがいたのが大きいんですが、前もって考えていたということにしておこうかなと(笑)。
――現在異世界おじさんマンガが3作連載中ですが、どれも人気だと伺いました。
渡邉 1月に新刊を同時発売する『シーカーズ~迷宮最強のおじさん、神配信者となる~』(漫画:ナカ村田、原作:AteRa)、『勇者殺しの元暗殺者。 ~無職のおっさんから始まるセカンドライフ~』(漫画/キクチ 原作/岡本剛也)、『運送屋のおっさんがなぜか副業で絶対無敵剣士を務めることに~さえない人生を送ってた俺が魔王討伐の切り札に?~』(原作/朔夜コノハ 漫画/星野倖一郎)の3タイトルですね。〈おじさん三部作〉としてどんどん盛り上げていきたいです。
――おじさんもののおもしろさはどのあたりにありますか?
渡邉 読んでみると、プリミティブなマンガの魅力があるんです。僕はドラえもんの劇場版を思い出すんですよ。普段の「ドラえもん」ではのび太はさえない少年ですが、劇場版だと異世界へ行って輝きますよね。で、今日本で一番「さえない」と言いやすい存在が、僕自身を含めたおじさんなんじゃないか……と(笑)。そういう人が異世界で活躍することは、実は昔からあるマンガの役割のひとつを果たすことに繋がっている。ちゃんと夢を叶えてくれるんです。
――確かにマンガにはそういう魅力もありますね。
渡邉 展開にストレスをかけた後に上げてカタルシスを作るマンガのセオリーがありますが、異世界マンガではあえてやりません。ストレスフルな時代だからこそ、「多分こうなるだろうな」という期待にはしっかり答えたい。「水戸黄門」など時代劇の作りにも似ているかもしれません。
■おもしろければどんどん取り入れて、なんでもありの雑誌にしていきたい
――Reader Store読者へのイチオシBUZZ作品は?
渡邉 『勇者殺しの元暗殺者。』は新しい試みをしているので注目してほしいですね。正義のはずの勇者が実は悪い奴で、1話目で主人公の暗殺者がやっつける。ただそこで彼は暗殺稼業から足を洗い、2話目以降はただのおじさんになって新生活を送るんです。テンプレ的な異世界おじさんマンガならひたすら無双するところで、人間生活をやりなおす。スローライフ的な要素を取り入れた渋い展開が反響を呼んでいます。
――あえての逆をいく展開なんですね。
渡邉 細かい新しさはいろいろ探求していて、『運送屋のおっさん~』だと主人公のスキルは振動なんですよ。打ち合わせで「揺れってどうですか?」とアイディアが出た時に、もうみんな爆笑して。振動のスキルはありそうでなかったし、おじさんとの親和性もありそうだし、これは渋いな!と(笑)。そういう部分も楽しんでもらえたらうれしいですね。
――新連載の予定なども聞かせてください!
渡邉 2月以降新連載が始まる予定なので、ご期待いただければ。2月配信では、異色の異世界マンガ『放課後ファンタジー』がスタートします。アニメ化もされた女子柔道マンガ『もういっぽん!』の作者・村岡ユウ先生の完全新作です。来春以降も続々新連載が始まる予定です。
――今後の「BUZZ」のヴィジョンは?
渡邉 今、社会が混沌としていますよね。異世界マンガを読んで気持ちがいい部分と現実社会をリンクさせて、当事者意識で乗れるマンガができたらと考えたりしてます。たとえば政治や思想の対立もエンタメとして入れられるんだったら入れたいですし。異世界もの以外もおもしろければどんどん取り入れて、なんでもありの雑誌にしていきたいです。
――楽しみです。最後に編集者をめざすきっかけになった作品を教えてください。
渡邉 藤子不二雄A先生の『まんが道』です。実は学生時代に先生のドキュメンタリーを撮りたくて企画書を送ったんです。実現はしませんでしたが、丁寧なお断りの手紙とサイン入りの『まんが道』をいただいて感激しました。本当にマンガへのピュアで熱い思いがつまった作品ですよね。僕の原点です。
インタビュー・文 横井周子
写真 宇壽山貴久子
▼プロフィール
渡邉直城(わたなべ・なおき)
日本大学藝術学部放送学科を卒業後、少年画報社に入社。2020年秋田書店入社。「チャンピオンBUZZ」編集長、「週刊少年チャンピオン」副編集長。趣味はマンガのキャッチコピーに使えそうな言葉集め。
▼渡邉編集長が編集者を目指すきっかけになった作品
『まんが道<藤子不二雄(A)デジタルセレクション>』
藤子不二雄(A)著/小学館
戦後漫画史の貴重な記録でもある、連載期間43年に渡った藤子不二雄A先生の自伝的作品。主人公・満賀道雄と才野茂(藤子・F・不二雄先生がモデル)、二人の少年が出会い、漫画家という夢に向かって共に成長する姿を描く長編ロマン。青春の悩みや歓びを丹念に描き、読んだ者誰もが引き込まれる日本漫画の金字塔。
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▼「チャンピオンBUZZ」の人気作品をチェック!
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