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【新連載‼】おすすめマンガを紹介! 生と死の狭間に立つ不思議なコンビニが舞台の話題作『光の箱』をピックアップ!

「今日も疲れた~~~!!」そんな頑張った一日の終わりに、ほっと一息つくマンガタイムはいかがですか?
夜な夜なマンガを読みふけるマンガライター・横井周子が、疲れた夜に効いて明日へのパワーをくれる“おもしろいマンガ”を紹介します。
最近マンガ読んでないなという方はもちろん、面白いマンガと出合いたいけど次は何を読もう?という方にも、ぜひ読んでいただきたい新連載!
第一夜は、とある「コンビニ」を舞台にした物語で……?


◆第一夜『光の箱』衿沢世衣子(小学館)

こんばんは。はじめまして。マンガライターの横井周子と申します。マンガについて読んだり書いたり調べたり、時にはインタビューをさせていただいたりもしておりますが、普段は一介の会社員です。明日への英気を養うのは、夜な夜なタブレットを開いてはマンガに読みふける時間ーー。というわけで、この連載では、疲れた夜にもちょっとしたパワーをわけてくれる、おもしろいマンガを毎回紹介していくつもりです。

現代日本で暮らしていると、コンビニの明かりはもはや一種のふるさとのような、ほっとする存在になっている気がします。『光の箱』第1巻のカバーイラストは、そんな情景そのもの。ですが、よく見ると、ちょっと怖い。高くそびえたつ看板には謎の少女が座っていて、屋根にも男がゆらりと立っています。どちらも顔がよく見えず、それぞれの視線も交わらず、この世のものではないオーラがみなぎっています。そう、このマンガの舞台は「生と死の狭間に立つコンビニエンスストア」なのです。

ミステリックオムニバスと銘打たれた本作では、1話完結で死に際の人々がこの不思議なコンビニにやってきます。

©衿沢世衣子/小学館
©衿沢世衣子/小学館

第一話の主人公・ミサキは働きすぎの人。「分かってます 27連勤ですがタイムカードは押しません ちなみに寝てません」と上司と携帯で通話しながら来店したミサキですが、摩訶不思議な出来事に巻き込まれ、はりつめていた緊張の糸がプツリと切れます。ミサキがコンビニで最終的に買うのは、鍋焼きうどん。……うう、わかる。パワハラ上司のせいでうつろなミサキが、我にかえって発する「おなかすいた」というセリフにもほっとする一編です。

1話完結のオムニバスの一方で、『光の箱』では、コンビニで働く店員たちや店長の過去という全体を貫くドラマも展開します。徐々にひとりひとりの事情が明かされていきますが、店長の回はオカルトSFアクション、店員タヒニの回はコメディ。次々テイストが変わります。

作者の衿沢世衣子さんは、日常のシュールレアリストとでもいいましょうか、ふとした出来事からシュールな想像力を飛び立たせていくマンガ家です。究極の日常・コンビニを舞台にした『光の箱』では特にその飛び立ち力が冴え渡っていて、読みながら「え、そっち?」と驚かされることもしばしば。生死をテーマにしていることもあり、通底するのはシビアな現実ですが、シリアスになりすぎずどこか軽妙なのです。ページをめくるたびに色合いが移ろい、恐怖や悲しみと、喜びやユーモア、共感がさらさらとまじりあって複雑な気分のグラデーションに。ちょっと変わったマンガですが、この絶妙なニュアンスはクセになります。友達とかパートナーにも話しようのないモヤモヤした感情を、物語をとおして誰かと共有する。そんな密やかな喜びを味わえるからかもしれません。

 役に立たない超能力を持った女子たちの日常を描く『うちのクラスの女子がヤバい』シリーズや、短編集『ベランダは難攻不落のラ・フランス』などでも作者の飛び立つ想像力は堪能できます。『光の箱』とあわせておすすめです。

横井周子(よこい・しゅうこ)
普段は会社員をしている兼業マンガライター。選考委員を務めた第25回文化庁メディア芸術祭マンガ部門ソーシャル・インパクト賞『女の園の星』トークセッションが公開中。集英社のウェルネスメディア・yoiにてマンガ家インタビューシリーズ「マンガが生まれる場所」連載中。
■公式サイト https://yokoishuko.tumblr.com/works


◆書籍情報

『光の箱』

先の見えない世界で、光を照らす場所がある
Twitterで話題を読んだ「制服ぬすまれた」の作者・衿沢世衣子が贈る
ミステリック・オムニバスが登場! 生と死の狭間に立つコンビニエンスストア。その明かりに引き寄せられる人々が最後に買い求めるものは何なのか。そして、そこで働く青年二人の秘密とは――

『光の箱』【単話】(1)

真夜中の仕事帰り。 疲れ果てたOLが立ち寄ったコンビニは、奇妙な店員と客が集う場所だったー?。 ミステリ集「制服ぬすまれた」で話題沸騰の気鋭・衿沢世衣子が贈る、少しフシギな物語。Episode.1 「働きすぎてるミサキ」Episode.2「決められないユウト」を収録。

◆関連書籍

『うちのクラスの女子がヤバい』

1年1組はどこにでもあるごく普通のクラス。だけど、他のクラスとはちょっとだけ違うところがありました。女子生徒がみんな、「無用力」と呼ばれる、まるで何の役にも立たない、それも思春期だけしか使えない超能力を持っていたのです――。思春期女子はへんてこで、それがフツーで、みんなかわいい! 衿沢世衣子が描く、思春期限定・ちょっと不思議なハイスクール☆デイズ!

『ベランダは難攻不落のラ・フランス』

「衿沢さんの描かれる関係性は健やかで粋で
エロくないとこが逆にセクシーで
うわーってなります! 好きです!!」
──コナリミサト(マンガ家 『凪のお暇』ほか)

音楽と子ども、10代と冒険、秘められた魔法…… 
近作からレア作まで、衿沢世衣子のエッセンスが詰まった短編集。
各作品にセルフライナーノーツも書き下ろしました。

『制服ぬすまれた』

日常に潜むミステリーを描く珠玉の短編集
月刊フラワーズの名手が描く、日常に潜むミステリーを集めた5編。
【収録作品】
[制服ぬすまれた] ぬすまれたのは、一体なに?
[ワニ蕎麦]      日常に潜む、善意と悪意。
[カラスが鳴くから] どこまでもついてくる記憶――
[鉄とマヨ]  夏の終わり、消えた彼女を探してる――
[ハンドスピナーさとる] バイト先で出会ったのは、ヤンキー美女と殺人事件!?


みんなにも読んでほしいですか?

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