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今夜のおすすめマンガはこれ!仏革命前夜の葛藤と熱気描く、一気読み必至の『傾国の仕立て屋 ローズ・ベルタン』をピックアップ!

「今日も疲れた~~~!!」そんな頑張った一日の終わりに、ほっと一息つくマンガタイムはいかがですか?
夜な夜なマンガを読みふけるマンガライター・横井周子が、疲れた夜に明日へのパワーをくれる“おもしろいマンガ”を紹介します。
最近マンガ読んでないなという方はもちろん、面白いマンガと出合いたいけど次は何を読もう?と迷っている方にぜひお届けしたい連載です!
第二夜は、あの王妃マリー・アントワネットの“仕立て屋”として革命前夜を生きた女性の物語——。


◆第二夜『傾国の仕立て屋 ローズ・ベルタン』磯見仁月(新潮社)

ときどき無性に歴史ものを読みたくなります。かつて確かにこの世界に生きていた誰かが、どんな日常を送ったどんな人だったか。学校では習わない人間味あるエピソードと史実の因果とが、ガシッと組み合った時の感動といったら! 私にとってはこの世の裏側に迫るおもしろさが歴史もの最大の魅力で、実はそれってゴシップを楽しむ感覚にも通じるような……なんにせよ人類の根源的な好奇心を刺激するものであります。

『傾国の仕立て屋 ローズ・ベルタン』は、今、続きを心待ちにする歴史もののひとつ。時はフランス革命前夜。王妃マリー・アントワネットのもとで権勢を誇った、実在のモード商(※今でいうファッションデザイナーのような存在)ローズ・ベルタンが主人公です。名作『ベルサイユのばら』とも重なる時代が題材ですが、全く別の視点から描かれているのもおもしろいところ。この作品は、仕事を愛し、針一本でのし上がっていく女性を描いた「お仕事マンガ」なのです。

©磯見仁月/新潮社

18世紀フランスには身分制度があり、しかも女性が働ける場所は限られていたそう。作中のモノローグによれば「既製品のないこの時代、服はすべてオーダーメイド」「女が稼ぐのは容易ではなく、許された数少ない仕事の一つが仕立て屋だった」。平民出身で苦労人のベルタンはポーカーフェイス。モヤモヤした気持ちは、仕事にぶつけます。まわりが求める女性らしさを拒否して「“傾国のお姫様”ではなく“傾国の仕立て屋”になってやる」と決意する姿は現代へと通じるものがあり、ベルタンの自立心と野心にしびれます。

©磯見仁月/新潮社

第1巻には、のちのデュ・バリー夫人ことベキュー、髪結いのレオナール、そしてマリー・アントワネットという、ベルタンの生涯に大きな影響を与える3人のキャラクターが登場。物語が進むにつれ深まるそれぞれとの関係性もユニークです。特にレオナールとのあえて恋に踏み出さない男女バディぶりには、ときめかざるをえません。ベルタン&レオナールのコンビが創りだすファッションやヘアスタイルは今見ても斬新。作者の苦労がしのばれますが、史実に残る華麗なファッションが鮮やかな筆致で描かれています。

©磯見仁月/新潮社

断頭台のシーンから始まるこの物語。悲しい結末は歴史が語っており、ただのサクセスストーリーではないことが最初から約束されています。それでもなおまばゆい、熱気と葛藤に満ちた日々ーー。そうそう、このマンガは見開きページが素晴らしいのでできれば大きな画面で読んでいただきたいのですが、特に要所要所で繰り出される街並みの見開きには、旅人のように見入ってしまいます。個人の思惑などすべて飲み込む圧倒的なパワーが革命前夜の社会に脈打っているようで、恐ろしくも美しいのです。

©磯見仁月/新潮社

現在単行本は第9巻。ベルタンがいよいよ王妃アントワネット付きのモード商として活躍を始めたところです。ここから彼女は、歴史のうねりの中で「傾国の仕立て屋」にどう変貌していくのか。先駆的な女性だったからこそ直面する壁を予感させつつ、働く女性の道は続きます。

横井周子(よこい・しゅうこ)
普段は会社員をしている兼業マンガライター。選考委員を務めた第25回文化庁メディア芸術祭マンガ部門ソーシャル・インパクト賞『女の園の星』トークセッションが公開中。集英社のウェルネスメディア・yoiにてマンガ家インタビューシリーズ「マンガが生まれる場所」連載中。
■公式サイト https://yokoishuko.tumblr.com/works

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◆書籍情報

傾国の仕立て屋 ローズ・ベルタン

18世紀フランス革命前夜。平民の出ながら、ヴェルサイユ宮殿で貴族以上の権勢を誇る“仕立て屋”がいた。彼女の名はローズ・ベルタン。悲劇の王妃マリー・アントワネットの寵愛を受け、革命の波にのまれていった、ファッションデザイナーの祖と称される人物の物語。

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傾国の仕立て屋 ローズ・ベルタン 分冊版

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